異文化:職場には特に…
『男は火星から、女は金星からやってきた』という本に書かれているように、フィリピン人と日本人の間にも褒め方やコミュニケーション、問題への対処法に大きな違いがあります。
実習生の生活指導員として、私は日本で働くフィリピン人が性別に関係なく感情を表に出しやすい傾向があることに気づきました。仕事だからこそ、外国人労働者を受け入れる際には、十分な理解と適切な環境づくりが重要で、それが結果的に企業にとっても有益だと思います。
では、フィリピン人の職場での特徴について具体的に見ていきましょう。
1. 褒めると伸びるタイプが多い
普段受け入れている実習生の人数は、会社によって少なくとも2名となります。入ってからは、ゼロから教育しないといけないのが当然です。
しかし、6ヶ月、1年経った時に、もし成長が見られない場合、指導のために私たちが呼ばれることがあります。最初の頃は通訳だけの仕事でした。
通訳の内容の大半は例えば「Aくんはこの半年でこの作業までできるようになりましたが、あなたは全然できていなね」などといった人と人を比較するようなことであり、そのまま通訳するようにしていました。
しかし、ある日、いつものやり方で進めていくと、実習生の反応が暗くなり始めました。そのやり方はフィリピン人に合わないと上司に提案して、上司も理解してくれました。
その上司も急遽言い方を柔らかくし、まるで行き先を変えずに違うルートで「今までよく頑張っていると思いますが、最初はこの作業のこのところができなかったけど、少しできるようになってる。
ただ、この作業のここまでできたら完璧です」という風に誘導するような方法を試みました。これにより気づいたことは、フィリピン人は他人と比較されること自体が存在を否定されたと感じてしまう傾向があることです。
スキルが上達しないことに対して反発するだけでなく、会社に対して反感を抱く恐れもあります。
実は、褒めると伸びるフィリピン人が多いです。彼らは目標に対して、現状がどれだけ進んでいるのか、またはどれだけ残っているのかという進捗を示してもらうことで、モチベーションが上がる傾向にあります。
言葉で具体的に指導することが、頑固なフィリピン人に対しても効果的です。
ただし、最も重要なのは指導しながら反応を見ることです。進むべき方向を変えずに違う方法で導くことを、決して忘れないでください。
2. 仕事の仲間は自分の家族のように接してしまう人が多い
フィリピン人の多くには、家族が全てという価値観を持つ人が少なくありません。周りに家族がいない環境での生活はフィリピン人実習生にとって大きな課題です。
ホームシックで寝られない実習生もいれば、諦めて帰国を希望する者もいます。そのため、どんなに小さなことでも親のように指導したり、声をかけたりしてくれる人がいると、その人が上司であっても「日本での家族」と感じやすくなります。
このような家族的な関係が形成されると、尊敬の念も生まれやすくなるのです。日本人にとっては単なる気配りであっても、たとえばフィリピンにいる家族の話を聞いたり、誕生日を祝うだけでもフィリピン人にとっては特別に感じることがあります。
どの国でも、職場で温かい雰囲気を作ることは重要ですが、フィリピン人にとっては特に安心感が大切です。私たちが安心感を示すと、時には誤解されるほどの親切心で接することがあります。
このため、日本では「そこまではしなくていいよ」というアドバイスをする場面も出てくるかもしれません。「では、あまり優しくしない方がいいのか?」と思う方もいるかもしれませんが、決してそうではありません。
フィリピン人実習生が「日本での大切な家族のために頑張る」と感じることで、会社への忠誠心も高まります。ある程度の優しさや温かさで接することが、長期的に見て会社にとっても有益であると言えるのです。
3. 仕事にプライドを持つフィリピン人への指導方法
最初にお話しした通り、フィリピン人は褒められることで成長するタイプが多いにも関わらず、たとえレベルが低くても仕事に誇りを持っています。
指摘が必要な場合には、「スピードアップしてください」や「不要な作業があるから遅くなっている」という表面的な指摘だけでなく、具体的で建設的なフィードバックが効果的です。例えば、スピードが落ちた場合、その原因を一緒に考え、ストップウォッチで測って、数字化にして適切なアドバイスをすることで、自己憐憫に陥るのを防ぎます。「自分は頑張っているのに、まだ足りないのか?」という気持ちにさせないように指導することが大切です。
実習生を有効に活用するためには、定期的なフィードバックが不可欠です。スピードの低下などの問題が発生した場合、適切なフィードバックによって、速やかな解決が期待できます。
外国人労働者が最大限に能力を発揮できるよう、教育内容やスキルアップのための面談を定期的に実施することは、非常に重要です。
そして、問題が大きくなる前に早期に対処できるようにするためには、しっかりとした受け入れ体制を整えておくことが不可欠です。
このようなアプローチが、私たちの成長を促進し、職場全体のパフォーマンス向上につながることを忘れてはなりません。
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